リン酸の語り処

遊戯王OCG考察・構築案の物置です。

他人のデッキを読む。~思い込みの流儀~ 【遊戯王Advent Calendar 4日目】

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 初めましての方は初めまして、そうでない人はいつもありがとう。リン酸と申します。普段は気の合う友人とのんびり遊んだり、時たま自作デッキの紹介記事を書いてる現役高校生。最近の悩みは数時間座りっぱなしだと腰に稲妻が走ることです。

 

 この度、刺身(@YPsashimi ) さんが企画されました「遊戯王Advent Calendar 2020」の4日目を担当させていただきます。企画の詳細はこちらからご確認ください。

 

 

 昨日はおかやん(@shuraBF )さんで「レアリティによるカードの見え方」に関する記事でした。文字通り見方を変えるとこんなにも変わるのだなと、とても惹かれる内容でしたね。読んでおられない方は是非ご一読ください。

 

 

 

本編概要

 他人の思考を知りたい、読み取りたい。

 誰しもそう思った経験は一度や二度はあるのではないでしょうか。かく言う私もその1人。読心術に関する本を読み耽ったのも最早懐かしい思い出です。

 これは遊戯王OCGにおいても近いことが言えます。他人のレシピの意図を読み取りたい、採用しているカードの理由が知りたい、etc…。デッキレシピだけ流れてきてそういった詳細が分からず歯痒い思いをした経験、皆様も多々あると思われます。ありますよね?

 経験のない方とは残念ながらここでお別れです。

 

 

 閑話休題

 詳細が不明であれば自力で読み取るしかないのですが、慣れていなければ少し手をこまねいてしまうかもしれません。

 そこで本編では、簡潔ではありますがデッキレシピの読み取り方を中心にお話したいと考えています。しかし漠然と話すだけだと難しいため、とある企画から聞いた話をもとに進めていきます。

 その企画とは、友人が主催する“他人のデッキを自分のものと思いこんで解説する”といった企画になります。その名の通り、他の人から貰ったデッキレシピのみを拝借して読み解き、あたかも自分のデッキであるかのように解説するといったものです。

 

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 何故そのようなことをしているかは全く不明ですが、内容としては今回の趣旨にピッタリ。あくまで伝え聞いた話ですので、多少の語弊があることはご了承ください。僕は友人その人ではありませんので。

 

 さて、他人のデッキを自分のものとして話すためには抑えねばならない点がいくつか挙げられます。大まかに分類すると以下の通りだそうです。

 ① デッキの方針・コンセプト

 ② 主な動き

 ③ コンボ・相性のいい組み合わせ

 この①〜③について、それぞれ例を挙げてお話していきましょう。

 

デッキの方針・コンセプト

 特定のカードやテーマが使いたい、思いついたコンボで戦いたい、カッコいい大型を並べたい、etc…。

 まずはそのデッキを使うにあたり最も大切であると言えるデッキの方針やコンセプトについて読み取っていきましょう。一見すると1番分かりやすい点ですが、ここが最も読み取るのが難しい…と友人は語ります。

 隠された意図を完璧に理解することなど不可能です、そもそも他人のデッキなので。ですので、大まかにでも「このデッキはこういうことを目指してるんだな」くらい掴めれば上出来です。そこを掴めれさえすれば、ある程度ならば読み取れるようになるとのこと。

 

 それではここで友人のデッキを例に挙げて、隠されているコンセプトを一緒に読み取っていきましょう。

 

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 こちらは友人作のデッキなのですが、何度見てもいいデッキだと思います。

 さて、このレシピを見た時に何をするデッキなのかパッと浮かびますか?分からなくても大丈夫です、今からポイントを挙げるのでそこから紐解いていきましょう。分かった方は残念ながらここでお別れになります。こちらから次の章へ足を進めてください。

 

 さて、コンセプトを読み取るために注目すべきは以下のポイントです。

 1. 採用枚数の多いカード・テーマに着目

 2. 採用カードのテンプレートを見抜く

 3. 採用されにくいカードに着目

 

1. 採用枚数の多いカード・テーマに着目

 1つ目は単純な話で、枚数が多いほどそのデッキの根幹に関わってくることが多いというもの。枚数の多いカードと同じテーマや種族であったり、関係する効果を持っている類もここに絡んできます。

 今回の例であれば「スクラップ」カードの採用が多いため、ここを中心に戦うのかな?と推測できます。そうすると枚数が多くて目立つ《スクラップ・サーチャー》の存在から「セルフブレイク」に関係するものが自ずと候補に上がってくるため、そこが読み解くキッカケへと変わります。

 

例1. 枚数の多いカード・テーマ(スクラップ編)

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 揚げ足取りが好きな人なら「手札誘発とかも3枚入るじゃん笑」みたいなことを喚きそうですが、そうであるなら「幅広く戦えるように意識してるのかな」といったことが推測できますよね。揚げ足を取ろうとしたそこのお方、謝ったほうが身のためですよ。

 

2. 採用カードのテンプレートを見抜く

 2つ目は俗に言う“テンプレート”を見つけることです。例えばテーマ間の繋がりは当然として、「ハリファイバーアウローラドン」やこのデッキにもある「スクラップワイバーン+ゴーレムキュリオス」のような組み合わせです。最近だと《七精の解門》からキュリオスラスティ・バルディッシュに繋ぐ動きなんかもありますね。

 ここを見つけるとその動きに付随するパーツが芋づる式に見つかっていき、カード間の繋がりがより明白になります。そうすることでデッキ内の構造が浮かび上がり、読み解く流れを生み出すことに繋がるそうです。

 

例2. 採用カードのテンプレート(ワイバーンキュリオス編)

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 話は逸れますが、時たま良くない表現のように扱われたりもするテンプレート。ですが「よく見るということ=安定しておりデッキを形作るに適している」ということなので、気にせず積極的に使っていきましょう。そこから自分なりに広がればいいのですから。

 

3. 採用されにくいカードに着目

 3つ目ですが、全てのデッキに適用されるわけではないことに加え、ある程度のカードへの知識が要求されるため少し難易度が上がります。ですが、やりたい事やコンセプトに繋がっていることもあるため、友人曰く重要な項目でもあるそうです。

 ここで言う“採用されにくいカード”とは、クセが強い・汎用的には使いにくく状況を選ぶなど、いわゆるあまり使われているのを見ないカードのことを指します 。

※「採用されにくい≠強くない」ということだけは明示しておきます。誤解を招くのは嫌なのでここだけは重々ご留意を。

 

 あまり見たことがないな?というカードが入っているということは「このカードを使いたい・このデッキのコンセプトに噛み合っている」といった根拠が隠されていることが多く、レシピを紐解く重要なピースになり得ます。

 

例3. 採用されにくい・あまり見ないカード

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 このデッキで例えるなら、上図のように《絶望神アンチホープ》や《マシュマカロン》などが該当します。どちらもデッキを組む過程で“自然に入る”カードではありません。逆説、ここがコンセプトに直結しているのでないか?と推測できます。

 

 以上の①〜③より読み取ったキーワードをまとめると次のようになります。

①:スクラップ(セルフブレイク)

②:ワイバーン→キュリオス(=特定の墓地送り)

③:アンチホープ+マシュマカロン

 

 これらを組み合わせると、このデッキの方針やコンセプトは「スクラップで準備を整えつつサーチャーのセルフブレイクでマシュマカロンを破壊星1を4体揃えてアンチホープを出す」でないかと推測できるわけです。少し無理やり繋げた感じは否めませんが、大まかな流れはこんなところです。

 挙げた3つのポイントからキーワードを探し出し、それらを組み合わせて予測する。やっていることは推理ものやメンタリズムに近いところがありますね。コレで君も今日から探偵だ!

 

主な動き

 本章ですが、実を言うと前章で語った内容と重複することが多めです。なので飛ばしてきた方は申し訳ありませんが、大人しくこちらから前章を読み直してきてください。

 

 ここでいう主な動きとは「初動に何をするか・やりたいことに繋がるまでどう動くか」ということです。基本はコンセプトの読み取り方と同じで、採用枚数の多いカードや普段採用されにくいカードに着目します。

 「主な動き=やりたい事」である場合も多々あるため、コンセプトが読み取れているなら主な動きについてもほぼ読み取れていると言っても過言です。そうでなくとも、コンセプトが読めているならデッキの流れも自ずと見えてくるため、そこに付随するカードから主な動きも合わせて見えてくる…らしいです。友人曰くね。

 

 分かる方もそうでない方も、今から挙げる例を元にその感覚を培っていきましょう。

 

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 このデッキも友人作の【フルデュラ】というデッキです。なんでも《幻妖フルドラ》と《アーティファクトデュランダル》の組み合わせがコンセプトのため、こんな名前にしたそうな。正直言ってセンスを疑います。

 

 まずは「採用枚数の多いカード・テーマ」から着目すると、不知火およびアンデット族関連が多いためここが展開の軸となるのでしょう。これらのカードとの組み合わせが「あまり見られないカード」について注目すると《黒牙の魔術師》が浮かび上がり、これに紐づいて《幻妖フルドラ》まで繋がりました。

 あとはランク5を組む上であまり候補には上がらない《アーティファクトデュランダル》に加えて《魔晶龍ジルドラス》の存在から、フルドラジルドラスでカードを拾って回したいんだろうな……といった一つの結論まで結び付きました。

 

例4. 主な動きへの絞り方

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 では、コンセプトのデュランダルまで繋ぐにはどうするのかを考えていきます。

 間違いなく星5モンスターが必要なので、軸となっている不知火関連から星5シンクロの《毒の魔妖-土蜘蛛》を出すのだろうと推測できます。そこに加えて《轍の魔妖-朧車》もいるということは、朧車土蜘蛛の流れで作ってフルドラと合わせてデュランダルへ繋ぐ…というところまで見えてきます。

 土蜘蛛のランダム墓地送りの効果で回収対象のバリエーション増加を狙っていることまで読み取れれば、もう教えることは何もありません。

 

例5.  デュランダルまでの流れ

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 大まかな流れではありますが、こんな形でコンセプトから主な動きまで繋げていくと読み取りやすいのかなと。いくら現代の遊戯王が何でも出来るとはいえ準備は必要なので、こういった流れは絶対に存在します。ある程度の慣れは必要ですが、繰り返し鍛えることで読み取る力は身についていくので日々の努力がものを言うわけですね。

 

「継続は力なり」

 

 僕の友人は会う度にこの言葉を語ってきます。皆さんも毎日でなくてもいいので、他人の思考になりきる訓練を積んでください。その一歩がきっとあなたの未来を大きく変えてくれるに違いありません。

 

コンボ・相性のいい組み合わせ

 先ほどまでの話と重複する部分はありますが、この章ではカード間のコンボや相性の良い組み合わせの探り方について記載していきます。

 

 しかし、様々なカードやテンプレートへの知識が重要となる関係上、ここまで辿り着くにはかなりの慣れを要します。加えて、特にこの辺りはデッキ製作者の思想が大きく絡んでくるため、いかに自分が製作者だと思い込んで読み取ることができるかが非常に重要となるとのこと。

 そのため、ここから先は精神面に類する話が増えてきます。自我を保つための訓練を十分に積んでいない方にはあまり推奨できない方法になるため、話半分で聞くことをお勧めします。戻ってこれなくなってからでは遅いので。

 

 それでは先ほどまでと同様、友人のデッキレシピを参考に確認していきましょう。

 

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 こちらは友人作の【CYCLE BASE】というデッキです。1章・2章と同様にコンセプトや主な動きについて読み取っていくと、以下の要素が確認されます。

無限起動・ロイドモンスターの枚数比が多い

・≪アサイクロイド≫と≪スーパービークロイド-モビルベース≫の存在

 

 これらの要素より、無限起動の動きからモビルベース融合召喚を目指してロイドを軸に戦うデッキだと推測できます。実際の動きについては割愛しますが、簡易融合などが入っていないことよりアサイクロイドの正規融合からモビルベースまで繋ぐのか?と予想できますね。

 

 ぱっとレシピを見た限り、汎用枠としての妨害札の枚数が少ないことがわかります。つまりこのデッキの制作者である友人は「妨害しつつやりたいことを通すより、安定してやりたいことまで繋げることを優先する人物」だと予想できます。つまるところ、採用されているカードはある程度がコンボ用orその準備のためであると考えてもよいでしょう。

 

例6. モビルベースまでの流れ

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 ここからは上記の内容を踏まえた上で各ロイドモンスターの採用理由を読み取っていきますが、その前にまずは製作者の気持ちになってみましょう。自分のことをデッキ制作者であると思い込んでください。ここが原点であり、且つ非常に重要な点になります。

 

例7.採用したロイド一覧

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 まずは《SRバンブー・ホース》について。このカードは風属性を墓地に送る効果があるため、着目すべきはデッキ内の風属性モンスターです。該当するものとしては《SR三つ目のダイス》や《電脳堺姫-娘々》が挙げられますね。

 ここで娘々に関係する星3モンスターに着目すると、《SRベイゴマックス》や《キューキューロイド》のように横に広げやすい星3がいることから《幻影騎士団ブレイクソード》や《水晶機巧-グリオンガンド》へ繋がるのでは?と考えられます。

 つまり、このデッキにおけるバンブーホース娘々はエクストラの強力なカードへ繋ぐために採用された、と読み取ることができます。

 

例8.バンブーホースからの流れ

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 もう一つは《デコイロイド》について。自身へ攻撃を誘導する効果を持っていますが、単体だとデコイになれるかすら怪しいレベルのカードです。しかし、自身が攻撃されない状況を作ると一気に価値が生まれるのがこの類の効果の特徴。このデッキには《機甲部隊の防衛圏》が入っているため、先ほど述べた状況を再現することができます。

 どちらのカードも序盤には機能しづらい効果であるため、モビルベースを使う上でのコンボ性を重視して採用したと考えるのが妥当でしょう。序盤の動きを安定させたからこそ入る枠、とも言い換えられますね。

 

 上記の2つを見て気付いた方もいらっしゃると思いますが、これらの動きは「モビルベースを出す」という点には直接関わってはいません。そのため、自分が「妨害しつつやりたいことを通すより、安定してやりたいことまで繋げることを優先する」人物だと上手く思い込めていないと、先程挙げたカードがコンボ用orその準備のためと気付けなかった可能性があります。

 これこそが自分をデッキ制作者であると思い込むことの非常に大きなメリットとなります。製作者その人と思い込むことにより、製作者の深層心理にまで手を伸ばすことが可能となるのです。

 

終わりに

 ここまでご覧いただきありがとうございました。

 さて、長々と友人の考えをあたかも自分のもののように語ってきましたが如何でしたか?他人のレシピを読み取るときの着眼点、そして自分が製作者だと思い込むことの重要性。ほんの少しでも伝わっていれば至極恐悦です。

 あくまで考え方の1つであるため、導き出したものは必ずしも正解であるとは限りません。しかしそれはあなたが見つけた答えであり、間違いなく正解の1つでもあるのです。

 

正解はひとつ!じゃない!!

ある有名な探偵もそう語っています、胸を張っていきましょう。

 

 そして大事なことをもうひとつ。

 今回お話したデッキの読み取り方ですが、裏を返すとここを話せばある程度意図が伝わるポイントであると言えます。すなわち「自分のデッキを紹介したい!」となった時、先ほど述べた要所を押さえて説明すればよいということ。書き方が分からなくて困ってる…画面の前のそんなあなたもこれで安心。

 

 

 

さぁ今すぐレシピを挙げろ

ついでに説明も書き上げろ

さもなくば貴様の思考を読み取るぞ

 

 

 

 

 

閑話休題

明日は「遊戯王Advent Calendar2020」の5日目、ライターはリゲル(@ssslqstm )さんとなっております。

 

 

 改めまして読者の皆様へ感謝を述べさせていただきます。ここまで読んでいただきありがとうございました。

 そして主催の刺身さん、本企画へ参加されたライターの皆様、宣伝にご協力いただきました遊戯王ブログナビ(@YGO blognavi )様、楽しい時間を提供いただき本当にありがとうございます。

 

 まだまだ続く「遊戯王Advent Calendar2020」、どんどん盛り上がって皆様が楽しむ一端となれれば幸いです。

 昨日までの記事も明日以降にあがる記事も、全部魅力的なので是非最後までお楽しみください!

 

〜Fin.〜